中小企業診断士の過去問
令和3年度(2021年)
企業経営理論 問3

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 令和3年度(2021年) 問3 (訂正依頼・報告はこちら)

M&A( 企業の合併・買収 )に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • M&Aに当たって企業価値を算定する際には、複数の方法が用いられている。そのうち、マーケット・アプローチとは、M&Aの対象となる企業の収益力をベースに、企業価値を算定する方法である。
  • M&Aにおいて、買収価格が買収対象企業の純資産の時価評価額を上回る場合、その差額は「負ののれん」と呼ばれる。
  • M&Aの手法として事業譲渡をとる場合には、譲渡・承継の対象となる資産や負債を個別に選択することができる。
  • MBO( Management Buyout )とは、M&Aの対象となる企業や事業の経営陣が、投資ファンドなどの第三者に、主体的にその企業を売却して、経営から退くことである。MBOが成立すると、経営陣は退任の見返りとして、金銭的報酬を受け取る。

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この過去問の解説 (4件)

01

企業経営論、経営法務で頻出のM&A( 企業の合併・買収 )の理解を問う問題です。

マーケット・アプローチとは、企業の対価を株式市場やM&A市場における取引価額を基準に算定する評価方法です。 具体的には、「類似企業比較法」等があげられます。

一方、M&Aの対象となる企業の収益力をベースに企業価値を算定する方法としては、インカムアプローチ」と呼ばれ、代表的な方法としては、将来のフリーキャッシュフローを算定して評価する「DCF法」、株主が受け取る配当額から評価する「配当還元法」などがあります。

M&Aにおいて、買収価格が買収対象企業の純資産の時価評価額を上回る場合、その差額は「のれん」と呼ばれます。負ののれん」は、買収価格が買収される企業の純資産の時価評価額が下回る場合のその差額を指します。

事業譲渡では、譲渡・承継の対象となる資産や負債を個別に選択することができます。

MBO( Management Buyout )とは、M&Aの対象となる企業や事業の経営陣が、投資ファンドなどの第三者に、主体的にその企業を売却して、自ら経営を行う事です。

経営陣が退任の見返りとして金銭的報酬を受け取ることはゴールデンパラシュートと呼ばれます。

したがって、3正解です。

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02

M&A( 企業の合併・買収 )に関する問題です。

正解は3です。

1.× M&Aの対象となる企業の収益力をベースに、企業価値を算定する方法をインカム・アプローチといいます。

また、マーケット・アプローチは、株式市場やM&A市場の取引額を基準に算定する評価方法です。

2.× M&Aにおいて、買収価格が買収対象企業の純資産の時価評価額を上回る場合、その差額は「のれん」、また、下回る場合は、「負ののれん」と呼びます。

3.〇 問題文の通りです。事業譲渡を行う会社間の同意により、対象となる資産や負債を個別に選択することができます。

4.× MBO( Management Buyout )とは、M&Aの対象となる事業の後継者となる経営陣が、金融機関や投資ファンドなどの第三者から資金調達を行い、

オーナー経営者等から株式や事業を買収し、自社の経営権を取得する手法です。経営陣が退任をしたり、金銭的報酬を受け取るものではありません。

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03

正解は、「M&Aの手法として事業譲渡をとる場合には、譲渡・承継の対象となる資産や負債を個別に選択することができる。」です。

【基礎知識】

〇M&Aの種類

Ⅰ.合併

Ⅰ‐1 新設合併:新会社を立ち上げ、その会社に消滅会社の権利等を引き継がせる

Ⅰ‐2 吸収合併:消滅会社の権利等をすべて存続会社が吸収する

Ⅱ.買収

Ⅱ‐1 事業譲渡・資産買収

・新設分割:新たな企業が既存の事業の一部またはすべてを引き継ぐ。

・吸収分割:事業の一部またはすべてを引き継ぎ、株式、現金等で対価を支払う。事業譲渡のように1つ1つの指定はしない。

・事業譲渡:売り手企業の事業の一部、すべてを買収する。資産、負債、契約などを1つ1つ指定して買収する。

Ⅱ‐2 株式取得・資本参加

・株式移転:新しく設立した会社が複数会社から株式を引き受け、対価として自社の株式を交付する。

・株式交換:ある会社から発行済み株式のすべてを取得し、その対価として自社の発行済み株式を交付する。

・第三者割当増資:新しく発行する株式を特定の第三者に交付する。

・株式譲渡:売り手企業から株式を買収することで対象企業の経営権を獲得する。

〇企業価値評価

 M&Aの際に被買収企業の価値を評価します。

① コストアプローチ

評価対象企業のB/Sの財産的価値及び純資産価値に着目して価値を評価する手法。

② マーケットアプローチ(マルチプル法など)

上場している同業の類似企業や過去のM&Aの類似取引事例など、類似する企業・事業・取引事例の各種財務指標と比較することによって相対的な価値を評価する手法。

③ インカムアプローチ(DCF法など)

評価対象企業から将来期待される利益やキャッシュ・フローに基づいて価値を評価する手法。

〇M&Aの方法

・友好的買収 → MBO(Management Buy Out):経営陣で株式を買い取る

・敵対的買収 → TOB(Take Over Bid):株式公開市場から買い付け(利益目的の投資家から市場を通じて購入)

☆プラスα

中小企業はそもそも上場企業が少ないことから、敵対的買収を仕掛けられるケースは限られます。

しかし、敵対的買収を仕掛けられたときに以下のような防衛策を講じて、買収を防ぎます。

選択肢1. M&Aに当たって企業価値を算定する際には、複数の方法が用いられている。そのうち、マーケット・アプローチとは、M&Aの対象となる企業の収益力をベースに、企業価値を算定する方法である。

誤り。インカムアプローチの説明です。

選択肢2. M&Aにおいて、買収価格が買収対象企業の純資産の時価評価額を上回る場合、その差額は「負ののれん」と呼ばれる。

誤り。のれんはM&Aなど企業買収をした際に、買収された企業の時価評価純資産と、実際の買収価額の差額のことを言います。時価評価純資産よりも実際の買収価格が高い場合、その企業には持っている金銭的価値以上のものがあるということになります。この時正ののれんと言います。

選択肢3. M&Aの手法として事業譲渡をとる場合には、譲渡・承継の対象となる資産や負債を個別に選択することができる。

正しい。事業譲渡の特徴です。吸収分割の場合は、事業、会社を一括で引き受けます。

選択肢4. MBO( Management Buyout )とは、M&Aの対象となる企業や事業の経営陣が、投資ファンドなどの第三者に、主体的にその企業を売却して、経営から退くことである。MBOが成立すると、経営陣は退任の見返りとして、金銭的報酬を受け取る。

誤り。MBOは経営陣で株式を買い取るM&Aの手法です。

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04

M&A( 企業の合併・買収 )に関する問題です。

選択肢1. M&Aに当たって企業価値を算定する際には、複数の方法が用いられている。そのうち、マーケット・アプローチとは、M&Aの対象となる企業の収益力をベースに、企業価値を算定する方法である。

M&Aの対象となる企業の収益力をベースに企業価値を算定する方法は、インカム・アプローチです。

 

「収益力」なので、企業に入ってくる収入(income)です。

選択肢2. M&Aにおいて、買収価格が買収対象企業の純資産の時価評価額を上回る場合、その差額は「負ののれん」と呼ばれる。

M&Aにおいて、買収価格が買収対象企業の純資産の時価評価額を下回る場合、その差額は「負ののれん」と呼ばれます。

選択肢3. M&Aの手法として事業譲渡をとる場合には、譲渡・承継の対象となる資産や負債を個別に選択することができる。

正解の選択肢となります。

選択肢4. MBO( Management Buyout )とは、M&Aの対象となる企業や事業の経営陣が、投資ファンドなどの第三者に、主体的にその企業を売却して、経営から退くことである。MBOが成立すると、経営陣は退任の見返りとして、金銭的報酬を受け取る。

MBO( Management Buyout )とは、M&Aの対象となる企業や事業の経営陣が自らその企業を買収して、経営を担うことです。

まとめ

【補足】

M&Aは元々頻出論点ではありますが、後継者が未定の中小企業が増加しているため、従来の親族承継、従業員承継(Management Buyout)に加えて、M&Aも積極的に活用されるようになっています。

 

このような経営環境を鑑みると、同一年度でM&A関連の出題が複数科目で問われることがあってもおかしくありません(本問についても、企業価値の算定方法や「のれん」に関する選択肢は財務会計の領域であり、事業譲渡については経営法務の領域です)。

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