中小企業診断士の過去問
令和4年度(2022年)
経済学・経済政策 問3

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経済学・経済政策 令和4年度(2022年) 問3 (訂正依頼・報告はこちら)

国民経済計算の考え方に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 生き物である乳牛や果樹などの動植物の価値は、GDPの計算に算入されない。
  • 国民経済計算における国民の概念は、当該国の居住者を対象とする概念であり、GDPの計算上は国籍によって判断される。
  • 山林の土地の価値は、土地に定着するものとして、民有林の立木の評価額を含む。
  • 消費者としての家計が住宅や自動車を購入すると、耐久消費財の最終消費支出となり、総固定資本形成に計上される。
  • 持ち家の帰属家賃や農家の自家消費は、市場において対価の支払いを伴う取引が実際に行われているわけではないが、家計最終消費支出に含まれる。

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この過去問の解説 (3件)

01

(基本知識)

国民経済計算に含まれるもの、含まれないものの知識を問う問題です。

 

GDP(国内総生産)と少し概念の異なる頻出指標のGNI(国民総所得)については、超基本となります。

 

GDPは「ある一定期間、国内で生産されたすべての財やサービスの付加価値の合計」と定義されます。GDPに含まれるか含まれないかという問題はそこそこ出ます。

 

問題を解く際のアプローチとしては、以下の2つです。

  ・原則的な考え方から正解を探し出す

  ・特殊な例外を押さえておいて、そこから解答を導く

 

GDPに含まれるかどうかの原則的な考え方は以下の3点です。

①市場で取引されているものである

 市場で取引されないと、GDPには含まれません。例えば家事。これは市場で取引されていませんので含まれませんが、家事代行サービスになると取引されているので含まれることになります。

②生産されている

 例えば中古品は一回生産されたものを売買することになりますので、GDPには含まれません。ただ、中古品の売買手数料などはサービスの対価になるので含まれます。また株のキャピタルゲイン・ロスなどは生産されていないので含まれません。また、土地の売買も生産されていないので含みません。

③最終財である

 例えば最終消費財としてのパンは含まれますが、そのパンを作るための小麦などの原材料(中間生産物)は含まれません。

 

上記3つの原則から外れる特殊な例外が帰属計算というものになります。

これは、サービス取引がなかったのに、犠牲的に取引があったものとしてGDPに含むものになります。

代表的なものは、(1) 農家の自己消費など、(2)持ち家の家賃相当、(3) 金融機関の帰属サービス、(4) 医療の社会保険分などになります。

 

もう少し細かく、含む、含まないを見ていきます。GDPは支出面から見ると、次の式で表されます。

 

民間最終消費支出+政府最終消費支出+固定資本形成+在庫品増加+(輸出-輸入)

 

それぞれの内容を整理していきます。

 

民間最終消費支出:家計の最終財、サービスに支出した金額になります。問題の自動車は中間財を除いて計算されますので、ここに含まれることになります。財務的な扱いと異なりますので注意してください。

政府最終消費支出;これは民間ではなく、政府が支出した金額になります。

固定資産形成:家計、政府含め、固定資産に支出したものです。ただし原則通り土地は除かれます。一方で問題にある畜産などの価値はここに含まれます。

在庫品増加:生産したものの在庫として残ったものです。生産されたものの、市場取引まで至っていませんが、金額を足します。

輸出―輸入:国内に純粋に増えた付加価値分の金額になります。

 

GDPとGNIの違い

 

GDPは国内の付加価値の合計になりますので、日本にいる外国人の所得を含みます。一方で外国にいる日本人の所得は含まれません。

GNIは逆で日本にいる外国人の所得を含まず、外国にいる日本人の所得を含みます。

 

これはD(Domestic:国内の)とN(National:国民の)の差になります。

選択肢1. 生き物である乳牛や果樹などの動植物の価値は、GDPの計算に算入されない。

固定資産形成に含まれますので、GDPに含まれます。

選択肢2. 国民経済計算における国民の概念は、当該国の居住者を対象とする概念であり、GDPの計算上は国籍によって判断される。

GNIの説明です。

選択肢3. 山林の土地の価値は、土地に定着するものとして、民有林の立木の評価額を含む。

土地は含みませんが、山林を原材料として取り扱うと含みますので、切り離して扱います。

選択肢4. 消費者としての家計が住宅や自動車を購入すると、耐久消費財の最終消費支出となり、総固定資本形成に計上される。

自動車は民間最終消費財になります。

選択肢5. 持ち家の帰属家賃や農家の自家消費は、市場において対価の支払いを伴う取引が実際に行われているわけではないが、家計最終消費支出に含まれる。

正しい記載です。帰属計算となり、例外扱いとなります。

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02

GDPの計算の考え方に関する問題です。少し内容的に細かい部分もありますが、GDPに関する一連の知識として、問題を解く度に覚えてしまうというのも一つの対応の仕方ではないかと思います。

選択肢1. 生き物である乳牛や果樹などの動植物の価値は、GDPの計算に算入されない。

生き物である乳牛や果樹などの動植物の価値(成長による評価額)は、農業に関する経済計算上GDPの計算に算入されます。

選択肢2. 国民経済計算における国民の概念は、当該国の居住者を対象とする概念であり、GDPの計算上は国籍によって判断される。

GDPの定義は、国内で一定期間に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額です。日本の国籍を有しない人でも国内で付加価値を生み出せばGDPの計算対象となります。

選択肢3. 山林の土地の価値は、土地に定着するものとして、民有林の立木の評価額を含む。

立木の評価額は伐採による生産時にGDPに含まれますので、山林の土地の評価額に含まれません。

選択肢4. 消費者としての家計が住宅や自動車を購入すると、耐久消費財の最終消費支出となり、総固定資本形成に計上される。

住宅は固定資本形成に計上されますが、自動車は最終消費支出となるだけで、固定資本形成の対象にはなりません。

選択肢5. 持ち家の帰属家賃や農家の自家消費は、市場において対価の支払いを伴う取引が実際に行われているわけではないが、家計最終消費支出に含まれる。

正解です。記載内容の通りです。

まとめ

GDPの計算方法に関する設問でした。具体的な経済計算の方法は政府で決定されていますが、内容を気にするときりがありませんので、問題演習の中で問われたものを中心に覚えていくのも一つの勉強法ではないかと思います。

参考になった数21

03

国民経済計算の考え方に関する問題です。

選択肢1. 生き物である乳牛や果樹などの動植物の価値は、GDPの計算に算入されない。

不適切です。

GDPは国内総生産のことで、消費+投資+政府支出+(輸出-輸入)で求められます。

生き物である乳牛や果樹などの動植物も国内で「消費」されるものはGDPの計算に算入されます。

選択肢2. 国民経済計算における国民の概念は、当該国の居住者を対象とする概念であり、GDPの計算上は国籍によって判断される。

不適切です。

GDPを計算する際に、例えば消費に着目すると、国内で消費されたものが対象となります。よって国民の概念は国籍によって判断されるものではありません。

選択肢3. 山林の土地の価値は、土地に定着するものとして、民有林の立木の評価額を含む。

不適切です。

山林のうち、土地と民有林の立木は分けて評価されます。

選択肢4. 消費者としての家計が住宅や自動車を購入すると、耐久消費財の最終消費支出となり、総固定資本形成に計上される。

不適切です。

総固定資本形成は固定資産への投資のことですが、自動車の購入は民間最終消費となります。

選択肢5. 持ち家の帰属家賃や農家の自家消費は、市場において対価の支払いを伴う取引が実際に行われているわけではないが、家計最終消費支出に含まれる。

適切です。

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