中小企業診断士の過去問
令和4年度(2022年)
企業経営理論 問6

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 令和4年度(2022年) 問6 (訂正依頼・報告はこちら)

ある企業では、近隣農家からブドウを仕入れて、仕入れたブドウだけを使って自社でワインを製造し、製造したワイン全量を近隣の酒販店に卸売りしている。この企業の垂直統合に当たる行動として、最も適切なものはどれか。
  • 近隣農家からの仕入れが不安定であることの対策として、ブドウが収穫される半年前に仕入価格を決定し、その価格で買い取ることにした。
  • 販売戦略を見直し、製造したワイン全量を近隣の酒販店に販売することを止めて、製造したワインの半分を遠方の酒販店に販売することにした。
  • 販売戦略を見直し、製造したワインの一部を自社で運営するWebサイトで消費者に直接販売することにした。
  • ワインケーキ需要の拡大を受けて、自社で製造したワインをワインケーキの製造業者に原料として販売することにした。
  • ワイン需要が堅調なことを受けて、近隣農家からのブドウの仕入れを増やし、生産能力向上のための設備投資を行った。

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この過去問の解説 (3件)

01

垂直統合、ならびに広い意味でのチャネル戦略の理解を問う応用問題です。

垂直統合とは、商品・サービスに必要な機能を取り込み、サプライチェーンを効率化することです。

サプライチェーンとは、「原材料メーカー→製品メーカー→卸売業→小売業→消費者」というようなモノの流れ(商流)を言います。

垂直統合には前方統合と後方統合の2種類があります。

前方統合は、商流に沿って、消費者側に統合することを指します。

本問を例にすると、「近隣の酒販店を買収し、経営を一体化する」、「小売業やネット販売事業を立ち上げ、直接消費者に売る」といった行動が前方統合にあたります。

後方統合は、商流に逆らい、原材料側に統合することを指します。

本問を例にすると、「近隣農家と専属契約を結ぶ」、「ブドウの栽培を始める」といった行動が後方統合にあたります。

一方、水平統合とは特定の工程を担う企業が一体化し、規模の経済を発揮することです。

(特定の工程を分離し、自社のコア事業に経営資源を集中させる「外注」や「アウトソーシング」はこの反対と言えます。)

また、本問を解くにあたっては「アンゾフの成長ベクトル」や「マーケティングの4P」、「ブランド」、「5フォース」の知識を想起することが求められます。

本問のような、単一事業のみを営む企業は、企業戦略・事業戦略・マーケティングが一体化しています。なので、戦略のレイヤーは意識しつつも、柔軟に考えていきましょう。

選択肢1. 近隣農家からの仕入れが不安定であることの対策として、ブドウが収穫される半年前に仕入価格を決定し、その価格で買い取ることにした。

誤り

5フォースの「買い手」(脅威)やマーケティングの4Pの「価格戦略」に通じる記述です。

価格の事前決定でリスクを回避する行動です。

選択肢2. 販売戦略を見直し、製造したワイン全量を近隣の酒販店に販売することを止めて、製造したワインの半分を遠方の酒販店に販売することにした。

誤り

アンゾフの成長ベクトルの「市場開拓戦略」や、販路拡大に通じる記述です。

販路を広げているだけで、「販売先の買収」のような「機能の取り込み」は行っていません。

選択肢3. 販売戦略を見直し、製造したワインの一部を自社で運営するWebサイトで消費者に直接販売することにした。

正しい

上記の説明通り、Webサイトでの販売は、製造の機能に「販売の機能」を取り込む・追加すると考えられるので、垂直統合の前方統合にあたります。

選択肢4. ワインケーキ需要の拡大を受けて、自社で製造したワインをワインケーキの製造業者に原料として販売することにした。

誤り

この記述はアンゾフの成長ベクトルの「市場開拓戦略」と考えられます。

また、マーケティングの視点では、自社のワインを製品ではなく、「原材料」という視点で、「ワインケーキの製造業者」という新しい顧客に訴求する「ブランド・リポジショニング」と考えることもできます。

選択肢5. ワイン需要が堅調なことを受けて、近隣農家からのブドウの仕入れを増やし、生産能力向上のための設備投資を行った。

誤り

この記述は増産体制構築のための行動であり、強いていえば、アンゾフの成長ベクトルの「市場浸透戦略」にあたります。

まとめ

2次試験では、本問のように与件の記述から、事例企業がとっている戦略や行動の名称・知識を結び付ける能力が求められます。

ひとつの知識から芋づる式に他の知識も連想できるように、1次試験過去問を通して鍛えましょう。

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02

企業の垂直統合に関する問題です。垂直統合とは、企業が自社の製品やサービスを市場に供給するためのサプライチェーンに沿って、事業ドメインの上流から下流までを統合して競争力を強めるビジネスモデルのことをいいます。

設問の例では、近隣農家からの仕入れから近隣の酒販店への販売までがワインに関するサプライチェーンを構成するものとなります。もし当該企業が垂直統合を図ろうとすると、仕入先である近隣農家でのブドウ栽培事業か、近隣の酒販店での販売事業か、のいずれかが垂直統合の対象となります。

選択肢1. 近隣農家からの仕入れが不安定であることの対策として、ブドウが収穫される半年前に仕入価格を決定し、その価格で買い取ることにした。

仕入価格の事前決定を行うもので垂直統合には当たりません。

選択肢2. 販売戦略を見直し、製造したワイン全量を近隣の酒販店に販売することを止めて、製造したワインの半分を遠方の酒販店に販売することにした。

従来とは異なる市場に製品を投入することですので、多角化の例です。

選択肢3. 販売戦略を見直し、製造したワインの一部を自社で運営するWebサイトで消費者に直接販売することにした。

正解です。

販売事業の一部を自社で行うことになりますので、垂直統合に当たります。

選択肢4. ワインケーキ需要の拡大を受けて、自社で製造したワインをワインケーキの製造業者に原料として販売することにした。

自社での増産と販売先の拡大の例で垂直統合には当たりません。

選択肢5. ワイン需要が堅調なことを受けて、近隣農家からのブドウの仕入れを増やし、生産能力向上のための設備投資を行った。

増産のための設備投資を行っただけで事業の統合が行われる訳ではありませんので、垂直統合には当たりません。

まとめ

事業統合には本問のような垂直統合の場合と水平統合の場合があります。それぞれの要件を整理しておきましょう。

参考になった数7

03

垂直統合に関する問題です。

垂直統合とは、自社の仕入先、あるいは販売先を買収するなどしてを事業領域の拡張を行うことです。

選択肢1. 近隣農家からの仕入れが不安定であることの対策として、ブドウが収穫される半年前に仕入価格を決定し、その価格で買い取ることにした。

不適切です。

仕入先を買収し、仕入れ量を確保する場合は垂直統合と言えます。

選択肢2. 販売戦略を見直し、製造したワイン全量を近隣の酒販店に販売することを止めて、製造したワインの半分を遠方の酒販店に販売することにした。

不適切です。

販売先を拡大させているため、垂直統合とは言えません。

選択肢3. 販売戦略を見直し、製造したワインの一部を自社で運営するWebサイトで消費者に直接販売することにした。

適切です。

販売も自社で行うことで販売機能を取り込んでいるため、垂直統合と言えます。

選択肢4. ワインケーキ需要の拡大を受けて、自社で製造したワインをワインケーキの製造業者に原料として販売することにした。

不適切です。

販売先を取り込んだのではなく、商品の幅を広げたことなので垂直統合とは言えません。

選択肢5. ワイン需要が堅調なことを受けて、近隣農家からのブドウの仕入れを増やし、生産能力向上のための設備投資を行った。

不適切です。

仕入先を取り込むのではなく、仕入れ量を増やしただけですので垂直統合とは言えません。

参考になった数4