中小企業診断士の過去問
令和4年度(2022年)
経営法務 問19

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和4年度(2022年) 問19 (訂正依頼・報告はこちら)

保証に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。
  • 事業のために負担した借入金を主たる債務とし、法人を保証人とする保証契約は、その契約に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書で当該法人が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
  • 主たる債務者が死亡して相続人が限定承認した場合でも、保証人は主たる債務の全額について保証債務を履行しなければならない。
  • 保証契約がインターネットを利用した電子商取引等において、電磁的記録によってされただけでは有効とはならず、電子署名が付される必要がある。
  • 保証契約締結後、主たる債務者が保証人の承諾なく、主たる債務の債務額を増額する合意をした場合、保証債務の債務額も増額される。

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この過去問の解説 (3件)

01

保証とは、債務者がその債務を履行しない場合に、保証人がその債務の履行を代わりに行うことです。

選択肢1. 事業のために負担した借入金を主たる債務とし、法人を保証人とする保証契約は、その契約に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書で当該法人が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

事業に係る債務については、保証契約に先立ち、契約締結の日前1ヶ月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じません。ただし、保証人になろうとする者が、法人である場合には適用されません。

選択肢2. 主たる債務者が死亡して相続人が限定承認した場合でも、保証人は主たる債務の全額について保証債務を履行しなければならない。

限定承認とは、相続によって得た権利の範囲内で債務を負担することです。

限定承認をした場合であっても、その債務には変更がなく、保証契約は、その債務を担保するものであるため、影響を受けません。

そのため、保証債務について履行する必要があります。

選択肢3. 保証契約がインターネットを利用した電子商取引等において、電磁的記録によってされただけでは有効とはならず、電子署名が付される必要がある。

すべての保証契約は、書面でなければ無効とされています。

ただし、その書面には、電磁的記録も含まれます。

選択肢4. 保証契約締結後、主たる債務者が保証人の承諾なく、主たる債務の債務額を増額する合意をした場合、保証債務の債務額も増額される。

民法第448条で「主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。」と定められています。

そのため、主たる債務の債務額を増額する合意をした場合、保証債務の債務額も増額されることがありません。

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02

保証とは、金銭貸借契約等によって債権者(金銭を貸した者)と債務者(金銭を借りた者)とが存在し、債務者が借りた金銭を返済しないといった場合に、保証人が債務者に代わって金銭の返済を行うことです。

また、保証契約は、債権者と債務者間の契約とは別個の、債権者と保証人間の契約です。したがって、債務者が死亡して、その債務を相続人(たとえば、債務者の子ども等)が限定承認したとしても、債権者と保証人間の関係には影響しません。(相続人が限定された範囲で返済を行うだけです)

選択肢1. 事業のために負担した借入金を主たる債務とし、法人を保証人とする保証契約は、その契約に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書で当該法人が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

一見すると正解に思えますが、法人を保証人とする場合には、公正証書による保証意思の確認は適用されません。なお、「締結の日前1か月以内に作成された公正証書」という記述自体は適切です。

選択肢2. 主たる債務者が死亡して相続人が限定承認した場合でも、保証人は主たる債務の全額について保証債務を履行しなければならない。

その通りです。

選択肢3. 保証契約がインターネットを利用した電子商取引等において、電磁的記録によってされただけでは有効とはならず、電子署名が付される必要がある。

前提として、保証契約は書面でなされない限り無効となります。「書面」には電磁的記録も含まれるため正解に思えますが、電子署名が付される必要までは求められていません

選択肢4. 保証契約締結後、主たる債務者が保証人の承諾なく、主たる債務の債務額を増額する合意をした場合、保証債務の債務額も増額される。

保証契約は、主たる債務が返済されなければ主たる債務者に代わって保証人が返済しなければならないという「附従性」を伴っています。しかしながら、保証債務は主たる債務よりも責任が重いものであってはならないとも規定されており、主たる債務者が保証人の承諾なく主たる債務の債務額を増額したとしても、保証債務の債務額が増額されることはありません。(この選択肢が正解であれば、保証人は一方的に不利益を被ることになります)

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03

保証とは様々な場面で出てくる契約の一つです。

代表的な性質として、附従性、随伴性、補充性(催告の抗弁、検索の抗弁)、分別の利益が挙げられます。

選択肢をそれぞれ解説していきます。

選択肢1. 事業のために負担した借入金を主たる債務とし、法人を保証人とする保証契約は、その契約に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書で当該法人が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

事業のために負担した貸金等債務の保証契約は、選択肢のように公正証書による意思表示が必要とされています。

しかし、この規定は法人には適用されません

本選択肢は法人にも適用されるとしているため不正解です。

選択肢2. 主たる債務者が死亡して相続人が限定承認した場合でも、保証人は主たる債務の全額について保証債務を履行しなければならない。

限定承認は相続人の責任のみに影響するものであるため、保証人には影響ありません

そのため本選択肢が正解です。

選択肢3. 保証契約がインターネットを利用した電子商取引等において、電磁的記録によってされただけでは有効とはならず、電子署名が付される必要がある。

保証契約は書面によるものである必要がありますが、電磁的記録によるものでも有効となり、電子署名までは求められていません

電子署名が付されていれば電磁的記録が真正に成立したと推定される効果はあります。

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢4. 保証契約締結後、主たる債務者が保証人の承諾なく、主たる債務の債務額を増額する合意をした場合、保証債務の債務額も増額される。

保証債務には主たる債務よりも責任が重くなってはならないという内容の規定があります。

それに照らし合わせると本選択肢のように、保証人の承諾なしに債務額を増額しても、保証債務の債務額は増額されないことになります。

そのため本選択肢は不正解です。

まとめ

保証契約の中には連帯保証があります。

保証契約の一つですが、検索の抗弁や分別の利益が適用されない特徴があります。

このような点も論点になる可能性があるため注意してください。

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