中小企業診断士の過去問
令和4年度(2022年)
経営法務 問20

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和4年度(2022年) 問20 (訂正依頼・報告はこちら)

相殺に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。
  • 債権が差押えを禁じたものである場合でも、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができる。
  • 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前に取得した債務者に対する債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできない。
  • 相殺の意思表示には期限を付することはできないが、条件を付することはできる。
  • 二人が互いに相手方に対し同種の目的を有する債務を負担する場合で、自働債権が弁済期にあれば、受働債権の弁済期が到来していなくとも、期限の利益を放棄することで、相殺することができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

相殺に関する問題です。

選択肢1. 債権が差押えを禁じたものである場合でも、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができる。

民法第510条で「債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。」と定められています。

選択肢2. 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前に取得した債務者に対する債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできない。

民法第511条で「差押えを受けた債権の第三債務者は、差押えに取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。」と定められています。

選択肢3. 相殺の意思表示には期限を付することはできないが、条件を付することはできる。

民法第506条で「相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。」と定められています。

選択肢4. 二人が互いに相手方に対し同種の目的を有する債務を負担する場合で、自働債権が弁済期にあれば、受働債権の弁済期が到来していなくとも、期限の利益を放棄することで、相殺することができる。

民法第505条で「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。」と定められています。

期限の利益を放棄とは、債務の履行日がまだ到来していない場合にもかかわらず、先立って債務の履行を完了することです。

また、相殺を申し込む側の債権を自働債権、相殺を申し込まれた側の債権を受働債権といいます。

この設問では、受働債権について、期限の利益を放棄することで、双方の債務が弁済期となりますので、相殺することが可能です。

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02

「期限の利益」とは、期限が到来するまでの猶予期間のことです。例えば、仕入れた商品の代金100万円を翌月15日迄に支払わなければならない場合、翌月15日迄が「期限の利益」になります(翌月15日が到来するまで支払わなくても良い)。

勿論、翌月15日より前に支払っても構いません。この場合、「期限の利益を放棄」することになります。

選択肢1. 債権が差押えを禁じたものである場合でも、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができる。

差押えを禁じたもので相殺をすることはできません。全てに当てはまるわけではありませんが、「差押えを禁じたもの」が具体的に何か分からなくても、日本語の文章として違和感があるかどうかで正誤判断するという判断基準を持っておくと良いでしょう。なお、「差押えを禁じたもの」とは、日常生活に不可欠な金銭(給料や年金)という理解で十分です。

選択肢2. 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前に取得した債務者に対する債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできない。

差押え「前」に取得した債権であれば、対抗することができます

選択肢3. 相殺の意思表示には期限を付することはできないが、条件を付することはできる。

期限も条件も付することはできません

選択肢4. 二人が互いに相手方に対し同種の目的を有する債務を負担する場合で、自働債権が弁済期にあれば、受働債権の弁済期が到来していなくとも、期限の利益を放棄することで、相殺することができる。

その通りです。

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03

相殺とは、債権者が自己の債権と同種の債務を債務者に対して負っている場合に、その債権と債務を対等額で消滅されることです。

重要な語句として以下のものがあります。

相殺適状

相殺が認められる状態のことです。

当事者の間で、有効かつ同種で、相殺を許す性質の債権が対立し、双方が弁済期にあることです。

自働債権

相殺する側が相手方に対して有する債権のことです。

受働債権

相殺する側から見ると自分の債務のことです。

選択肢をそれぞれ解説していきます。

選択肢1. 債権が差押えを禁じたものである場合でも、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができる。

民法501条にて債権が差押えを禁じたものであるときは、相殺することはできないと規定されています。

相殺適状にならないと解釈することもできます。

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢2. 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前に取得した債務者に対する債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできない。

差押前に取得した債権による相殺であれば、差押債権者に対抗することができると規定されています。上記は民法511条の1にあります。

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢3. 相殺の意思表示には期限を付することはできないが、条件を付することはできる。

民法506条の1において、詳細の意思表示には期限も条件も付すことはできないとされています。

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢4. 二人が互いに相手方に対し同種の目的を有する債務を負担する場合で、自働債権が弁済期にあれば、受働債権の弁済期が到来していなくとも、期限の利益を放棄することで、相殺することができる。

受働債権とは相殺する側の債務のことです。

受働債権の期限の利益を放棄するとは、自身の期限の利益を放棄することに他ならず、自身の債務の弁済を前倒しするということです。

そのため受働債権の弁済期が到来していなくても、相殺することは認められています

自働債権は弁済期が到来しなければ、相殺適状ではないと規定されています。

以上により、本選択肢の内容は適切であるため本選択肢が正解です。

まとめ

相殺に関する問題が出題されたときは、相殺適状に該当するかどうか、自働債権と受働債権について落ち着いて考えるようにしましょう。

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