中小企業診断士の過去問
令和4年度(2022年)
経営法務 問22

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和4年度(2022年) 問22 (訂正依頼・報告はこちら)

相続に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置は考慮しないものとする。
  • 相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分について、登記その他の対抗要件を備えなくても、第三者に対抗することができる。
  • 相続人が数人ある場合において、一部の相続人が相続放棄をしたときは、放棄をした者を除いた共同相続人の全員が共同しても、限定承認をすることができない。
  • 相続人が相続財産である建物につき、5年の賃貸をしたとしても、単純承認をしたものとはみなされない。
  • 被相続人の配偶者が取得した配偶者居住権を第三者に対抗するためには、居住建物の引渡しでは認められず、配偶者居住権の設定の登記をしなければならない。

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この過去問の解説 (3件)

01

相続に関する問題です。

選択肢1. 相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分について、登記その他の対抗要件を備えなくても、第三者に対抗することができる。

相続による権利の承継は、相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができません。

選択肢2. 相続人が数人ある場合において、一部の相続人が相続放棄をしたときは、放棄をした者を除いた共同相続人の全員が共同しても、限定承認をすることができない。

共同相続人の一部が、相続を放棄した場合、相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます。

また、相続の限定承認は、相続人が数人ある場合、共同相続員全員が共同してのみすることが可能ですが、相続を放棄した者は、初めから相続人とならなかったとみなされるので、相続を放棄した者以外の共同相続人全員が共同して、限定承認をすることができます。

選択肢3. 相続人が相続財産である建物につき、5年の賃貸をしたとしても、単純承認をしたものとはみなされない。

相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、単純承認したものとみなされますが、民法第602条に定める期間を超えない賃貸は、単純承認されません。

民法第602条では、建物の賃貸借は3年と定められており、今回の設問では5年の賃貸ですので、民法第602条に定める期間を超えていますので、単純承認とみなされます。

選択肢4. 被相続人の配偶者が取得した配偶者居住権を第三者に対抗するためには、居住建物の引渡しでは認められず、配偶者居住権の設定の登記をしなければならない。

正解です。

民法第605条で「不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。」と定められており、これは配偶者居住権でも準用されます。

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02

「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)とは、配偶者の居住権を保護するための方策、遺産分割に関する見直し等、遺言制度に関する見直し、遺留分制度に関する見直し、相続の効力等に関する見直し、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策、といった内容を盛り込んだ改正のことです。

各選択肢をそれぞれ解説します。

選択肢1. 相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分について、登記その他の対抗要件を備えなくても、第三者に対抗することができる。

法定相続分を超える部分については、登記その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとされています。

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢2. 相続人が数人ある場合において、一部の相続人が相続放棄をしたときは、放棄をした者を除いた共同相続人の全員が共同しても、限定承認をすることができない。

相続放棄ははじめから相続人ではなかったと見なされます。

それをふまえると、相続放棄した者を除いた共同相続人の全員が同意すれば、限定承認することができます

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢3. 相続人が相続財産である建物につき、5年の賃貸をしたとしても、単純承認をしたものとはみなされない。

単純承認の要件に相続財産の処分があります。

相続財産を賃貸に出すことは処分に該当しますが、例外として土地5年・建物3年・動産6ヶ月を超えない賃貸であれば、単純承認にならないと定められています。

選択肢の建物5年の賃貸は例外から外れるため、単純承認をしたものとみなされないとしている本選択肢は不正解です。

選択肢4. 被相続人の配偶者が取得した配偶者居住権を第三者に対抗するためには、居住建物の引渡しでは認められず、配偶者居住権の設定の登記をしなければならない。

配偶者居住権は登記をしなければ第三者に対抗できないとされています。

そのため本選択肢が正解です。

まとめ

「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」において、遺産分割の前でも被相続人の預貯金の一部を払い戻すことが認められたり、自筆証書遺言を作成するときの財産目録は手書きで作成する必要がなくなったなどの改正も行われました。

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03

改正民法により、改正前からの変更点が理解できているかどうかが選択肢を絞り込むポイントになります。

選択肢1. 相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分について、登記その他の対抗要件を備えなくても、第三者に対抗することができる。

法定相続分を超える権利の承継については、民法の改正後は対抗要件を備えなければ第三者に対抗できなくなりました。

選択肢2. 相続人が数人ある場合において、一部の相続人が相続放棄をしたときは、放棄をした者を除いた共同相続人の全員が共同しても、限定承認をすることができない。

限定承認の場合は相続人全員が限定承認しなければいけませんが、相続放棄については、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます。したがって、相続放棄をした者を除いた共同相続人の全員が共同すれば、限定承認をすることができます。

選択肢3. 相続人が相続財産である建物につき、5年の賃貸をしたとしても、単純承認をしたものとはみなされない。

まず、「単純承認」という用語の確認です。単純承認とは、被相続人の権利義務を無条件で相続することを承認することです。平たく言えば、相続が始まったことを知ってから一定期間、何もしなければ自動的に単純承認をしたことになります。

それでは、一定期間の長さですが、賃貸(短期賃貸借)期間については建物が3年以内、土地が5年以内となっています。建物を5年賃貸していることから、単純承認をしたものとみなされます。

選択肢4. 被相続人の配偶者が取得した配偶者居住権を第三者に対抗するためには、居住建物の引渡しでは認められず、配偶者居住権の設定の登記をしなければならない。

正解の選択肢になります。

まとめ

改正民法のポイントの1つとして、選択肢1や4にあるように、対抗要件不要→必要、設定の登記不要→必要と要件が厳格になっていることに着目すると、選択肢を絞り込み易くなります。

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