中小企業診断士の過去問
令和5年度(2023年)
経済学・経済政策 問21
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問題
中小企業診断士試験 第1次試験 経済学・経済政策 令和5年度(2023年) 問21 (訂正依頼・報告はこちら)
情報の不完全性に起因するモラルハザードを軽減することを主な目的として行われる事例として、最も適切なものはどれか。
- 家電製品の製造業者が、顧客が製品を購入してから一定の期間内までは無償の保証サービスを提供する。
- 企業が投資資金を調達するにあたって、自社が発行する債券への格付けを民間の格付け会社から取得する。
- 被保険者の医療費をカバーする健康保険制度において、保険料の負担が被保険者である労働者だけでなく、雇用主側にも課せられる。
- 保険会社が、契約者であるドライバーが対物事故を起こした場合に、当該事故に伴う損害費用のうち一定金額を超える部分のみ補償を行う。
- 持ち家の所有者が旅行者に宿泊サービスを提供する場合、当該サービス取引の仲介業者が、住宅の貸し手に過去の利用者によるサービス評価を公表することを義務付ける。
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この過去問の解説 (2件)
01
本問で問われているモラルハザードとは、そもそも保険に加入することで保険金を目当てにして、保険加入者のモラルが低下してしまうことを指します。
そのような行為を幅広くモラルハザードとも呼びます。
情報の不完全性に起因するものに、逆選択という考え方があります。
逆選択とは、質の良いものが淘汰されて、質の劣るものが市場に出回ってしまうことを意味します。
上記をふまえて各選択肢を解説していきます。
選択肢のような行動で回避できるのはモラルハザードではなく逆選択です。
無償の保証サービスを提供できるのは自社の製品が良質であるという自信があるからで、消費者がそのような製品を選びやすくすることで、質の悪い製品を淘汰できます。
そのため本選択肢は不正解です。
選択肢のような行動で回避できるのはモラルハザードではなく逆選択です。
債権の格付け結果を提示すれば、質の悪い債権へ資金を貸すリスクを減らすことができるためです。
そのため本選択肢は不正解です。
被保険者の医療費をカバーする健康保険の保険料を雇用主側にも課すと、労働者の保険料負担が軽減されてしまい、モラルハザードを助長してしまうと考えられます。
そのため本選択肢は不正解です。
保険会社は事故に伴う損害費用のうち一定金額を超える部分のみ補償を行うようにすることで、ドライバーは運転を慎重に行うと期待でき、モラルハザードの回避につながると考えられます。
そのため本選択肢が正解です。
選択肢のような行動で回避できるのはモラルハザードではなく逆選択です。
過去の利用者によるサービス評価を公表することで、利用者は質の悪い宿泊サービスを利用する可能性は低減できると考えられます。
そのため本選択肢は不正解です。
逆選択は取引前に情報の不完全性があるため生じることになり、モラルハザードは取引後に存在する情報の不完全性により発生するとする考え方もあります。
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02
モラルハザードは、保険や他の安全ネットが存在することで個人や企業がリスクを軽視し、無駄な行動を起こす可能性が生じる現象です。
このことを念頭に、各選択肢の正誤を確認します。
誤りです。この事例では、保証サービスは商品の不具合に対する保障であり、モラルハザードの問題を解決するものではありません。モラルハザードは主にリスクの分担において問題が生じる現象であり、保証サービスはむしろ商品の品質や不具合に対する対応を示すものです。したがって、モラルハザードの軽減手段としては適していません。
誤りです。この事例では、格付けは信用力を評価する手段であり、モラルハザードの問題を直接解決するものではありません。格付けはむしろ市場において企業の債券を適切に評価し、投資家に情報提供する目的があります。モラルハザードの問題は主にリスク分担や責任の逃れに関連しており、格付けがそれを解決する手段ではありません。
誤りです。この事例では、保険料の負担を雇用主にも課すことで資金の調達源を広げ、保険制度を持続可能にする効果がありますが、直接的にモラルハザードの問題を解決するものではありません。モラルハザードの問題は被保険者が自身の健康リスクを軽視する可能性がある点に起因していますが、保険料の負担拡大がその解決に直結するわけではありません。
正解です。
誤りです。この事例では、仲介業者がサービス評価を公表することで透明性を高め、利用者に信頼性のある情報を提供する目的がありますが、直接的にモラルハザードの問題を解決するものではありません。モラルハザードの問題は、保険や他の安全ネットが存在することで個人や企業がリスクを軽視し、無駄な行動を起こす可能性が生じる現象です。
評価の公表はむしろ市場の透明性向上やサービス品質の向上を促進する効果がありますが、モラルハザードの問題に対処する直接の手段ではありません。モラルハザードの問題は主にリスク分担や責任の逃れに関連しており、評価の公表がそれを解決する手段ではないためです。
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