中小企業診断士の過去問
令和5年度(2023年)
財務・会計 問11

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 財務・会計 令和5年度(2023年) 問11 (訂正依頼・報告はこちら)

余剰現金の使途として、新規の設備の購入(D案)と長期借入金の返済(E案)を比較検討している。他の条件を一定とすると、D案とE案の財務諸表および財務比率への影響に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 固定長期適合率は、D案では悪化するが、E案では改善する。
  • 自己資本比率は、D案では不変であるが、E案では改善する。
  • 総資産は、D案、E案ともに不変である。
  • 流動比率は、D案では悪化するが、E案では改善する。

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この過去問の解説 (2件)

01

財務指標について、シュミレーションをしながら計算と知識を問う問題です。

それぞれの案を分析します。

 

D案

資産においては、現金を用いるため流動資産は減少し、設備を購入するので固定資産は増加します。

総資産は変化しないため注意してください

負債と自己資本は不変です。

 

E案

現金を用いるため流動資産は減少しますが、固定資産は不変です。

流動負債は同じく不変ですが、長期借入金を返済するため固定負債は減少します。

自己資本は不変です。

この案の場合だと、現金を用いて負債を返済するので、総資産が減少する点に注意してください。

 

上記をふまえて各選択肢を分析します。

選択肢1. 固定長期適合率は、D案では悪化するが、E案では改善する。

固定長期適合率とは安全な資産である固定負債や自己資本で、どれだけの固定資産をまかなえているのかを判断する指標です。

固定資産適合率を求める式を確認します。

 

固定長期適合率 = 固定資産 ÷ ( 固定負債 + 自己資本 )

 

D案だと、固定資産が増加するので分子だけが増加します。

そのため固定長期適合率は上昇するので悪化したと判断します

 

E案の場合は、固定負債だけが減少するため固定長期適合率が上昇するので悪化します

 

どちらの案でも固定長期適合率は悪化するため、本選択肢は不正解です。

選択肢2. 自己資本比率は、D案では不変であるが、E案では改善する。

自己資本比率は総資産のうち、安全な資産である自己資本がどれだけの割合を占めているのかを判断する指標です。

自己資本比率を求める式を確認します。

 

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産

 

D案では、自己資本も総資産も不変のため、自己資本比率も不変です

 

E案では、総資産だけが減少するため自己資本の割合が増えるので、改善したと判断できます

 

選択肢どおりの結果となるため、本選択肢が正解です。

選択肢3. 総資産は、D案、E案ともに不変である。

D案では総資産は不変ですが、E案では減少するため本選択肢は不正解です。

選択肢4. 流動比率は、D案では悪化するが、E案では改善する。

流動比率は、流動負債に対して、流動資産をどれだけ確保しているのか安全性を図る指標です。

流動比率を求める式を確認します。

 

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債

 

D案では流動資産だけが減少するため流動比率は悪化します

 

E案でも流動資産だけが減少するため流動比率は悪化します

 

そのため本選択肢は不正解です。

まとめ

財務指標は1次試験、2次試験のどちらでも問われる論点です。

計算するだけではなく、その指標の意味も問われるためその点も学習しておきましょう。

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02

各指標の目的と計算式を理解しましょう。

選択肢1. 固定長期適合率は、D案では悪化するが、E案では改善する。

誤りです。

固定長期適合率は、固定資産を安定した資金で賄えているかを示す指標です。

安定した資金というのを、返済義務のない自己資本と、すぐに返済義務のない固定負債の合計で表しています。

固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100

目的を踏まえると、比率が小さいほど安定している、といえます。

D案は分子が増えるので比率が上がります。従い、悪化します。

E案は分母が減るので、やはり比率が上がります。従い、悪化します。

選択肢2. 自己資本比率は、D案では不変であるが、E案では改善する。

正解です。

自己資本比率は、企業の総資産を、どれだけの自己資本で賄っているかを示す指標です。

数字が高いほど、(自己資本比率が高いほど)優良とみなします。

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100

D案は総資産内の内訳が変化するだけで、総資産の総額には影響せず、また自己資本も関係はありません。従い、自己資本比率の変動はありません。

E案は負債と総資産を減少させることになります。自己資本は、総資産から負債を差し引いたものであるため、自己資本比率が高くなります。従い自己資本比率は改善します。

選択肢3. 総資産は、D案、E案ともに不変である。

誤りです。

総資産は、D案は不変ですが、E案は減少します。

選択肢4. 流動比率は、D案では悪化するが、E案では改善する。

誤りです。

流動比率は、会社の安全性を評価するための指標で、流動資産と流動負債の比率を示します。100%未満の場合は資金繰りに留意する必要があるため、ここでは比率が高いほうが改善する、と考えます。

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

D案は分子のみが減るため、流動比率は悪化します。

E案も分子のみが減るため、流動比率は悪化します。

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