中小企業診断士の過去問
令和5年度(2023年)
企業経営理論 問29

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 令和5年度(2023年) 問29 (訂正依頼・報告はこちら)

消費者の購買意思決定において用いられる代替案の評価方法には、大きく分けて補償型と非補償型がある。これらの評価方法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 耐久消費財などの複雑な製品の購買意思決定においては、非補償型の評価方法のみが用いられることが多い。
  • 非補償型の評価方法の1つに分離型がある。この方法では、代替製品の各属性に十分条件を設定し、いずれかの属性においてこの条件を満たした製品を選択する。
  • 非補償型の評価方法の1つに連結型がある。この方法では、代替製品の各属性に必要条件を設定し、いずれかの属性においてこの条件を満たした製品を選択する。
  • 補償型とは、ある属性のマイナス面が他の属性のプラス面によって相殺(補償) され得る評価方法であり、最も簡略な方法であるため、日常の簡便な意思決定や衝動型購買などの場面でしばしば用いられる。
  • 補償型の評価方法は、ヒューリスティックスとも呼ばれる。

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この過去問の解説 (3件)

01

代替案の評価方法に関する問題です。

与件文にもあるように、代替案の評価方法には、大きく分けて補償型と非補償型があります。

本問の選択肢で用いられている表現を参考に、説明します。

【補償型】

何かの属性が劣っていても、他の属性で補うことができる(補償できる)という意思決定方法です。一言でいえば「総合評価」になります。

通常、製品の何か1つの属性だけで購買を決めることはなく、複数の属性を総合的に判断して購買するかどうかを決めています。

●加算型:複数の属性に「重要度」を設定し、属性値を掛け合わせた総和が最も高い選択肢を採用する方法。

●加算差型:2つの製品間で属性値の差分と重要度を掛け合わせた総和を比較し、トーナメント方式で残った選択肢を採用する方法。

【非補償型】

何かの属性が劣っていると他の属性で補うことができないため、その選択肢を排除するという意思決定方法です。

キーワードとして「ヒューリスティック(経験則、先入観)」があります。

分かりやすい例としては、スーパーなどで普段慣れ親しんだブランドを反復購入する場合が非補償型になります。

●連結型(足切り型)1つでも必要条件を満たさない属性があれば排除する方法。必要条件をすべて満たした場合は、そこで探索を終了する。

●EBA型(逐次削除型):複数の属性に必要条件を設定し、条件を満たさない選択肢を排除していく方法。

●辞書編纂型:すべての選択肢について重要度の高い属性から評価を行ない、選択肢が1つに絞られるまで評価を繰り返す。

●分離型:代替製品の各属性に十分条件を設定し、十分条件を1つでも満たした製品を選択する。他の属性が十分条件を満たしていなくても無視する一点突破型

選択肢1. 耐久消費財などの複雑な製品の購買意思決定においては、非補償型の評価方法のみが用いられることが多い。

耐久消費財などの複雑な製品の購買意思決定においては、非補償型の評価方法のみが用いられることが多いということはありません

耐久消費財などの複雑な製品では総合評価で判断するため、補償型の評価方法が用いられることが多いです。

選択肢2. 非補償型の評価方法の1つに分離型がある。この方法では、代替製品の各属性に十分条件を設定し、いずれかの属性においてこの条件を満たした製品を選択する。

正解の選択肢となります。

選択肢3. 非補償型の評価方法の1つに連結型がある。この方法では、代替製品の各属性に必要条件を設定し、いずれかの属性においてこの条件を満たした製品を選択する。

非代替製品の各属性に必要条件を設定し、いずれかの属性においてこの条件を満たした製品を選択する方法は、非補償型の分離型になります。

選択肢4. 補償型とは、ある属性のマイナス面が他の属性のプラス面によって相殺(補償) され得る評価方法であり、最も簡略な方法であるため、日常の簡便な意思決定や衝動型購買などの場面でしばしば用いられる。

補償型とは、ある属性のマイナス面が他の属性のプラス面によって相殺(補償) され得る評価方法であるため、最も簡略な方法ではありません

日常の簡便な意思決定や衝動型購買などの場面でしばしば用いられるのは、非補償型です。

選択肢5. 補償型の評価方法は、ヒューリスティックスとも呼ばれる。

冒頭の解説から、補償型の評価方法がヒューリスティックスとも呼ばれます。

まとめ

【補足】

本問で問われている内容は過去にも出題履歴がありますが、用語が難解であり正答率は高くないようです。

したがって、誰もが正答できるような基本的な論点で確実に正答できることを優先して頂き、本問については多少優先順位を下げ、余力があれば取り組んで頂くことを推奨します。

参考になった数22

02

正解は、「非補償型の評価方法の1つに分離型がある。この方法では、代替製品の各属性に十分条件を設定し、いずれかの属性においてこの条件を満たした製品を選択する。」です。

 

【基礎知識】

購買意思決定プロセスの代替品評価での評価方法についての問題です。

 

購買意思決定プロセスは以下の5段階で行われます(コトラー)。

 

①問題認知⇒②情報探索⇒③代替品評価⇒④購買決定⇒⑤購買後の行動

 

「こんなん欲しいな」とまず気づいて、その後ニーズを満たす商品を思い起こします(内部探索)。思いつかなければネットや雑誌などで情報収集します(外部探索)。そのときにクチコミや準拠集団といったものが情報探索、選択に影響を与えます。商品がいくつか浮かぶと代替品を評価します。そして購買を決定します。購買後も本当に買ってよかったのかを消費者は考えます。そして次の購買に活かしていきます。

 

このプロセスのうち、代替品評価では、以下のような方法があります。

 

①補償型

 色んな項目を合算して考える。例えばA、Bの商品選択において、デザインはAの方が好きだけど、性能がBの方がよく、Bを選ぶといったものです。当消費者は性能でデザインの差を補う(補償した)と考えます。

 

②非補償型 

 補償型をヒューリスティック(直感的)に切り替えたものです。補償型は多くの情報を収集する必要がありますが実生活の購買においてすべてを補償型で対応するには限界があります。

非補償型は考え方こそ直感的ですがいくつかのルールがあります。

 

・連結型ルール

一つでも必要条件を満たさない属性があると、商品の購入を諦めるルール。

 

・分離型ルール

一つでも十分条件を満たす属性があると、その他の属性を無視して、その商品を選択する。

 

・辞書編纂型ルール

複数の属性に関する十分条件を、重要な順に比較していき、決定できるまで逐次比較していくルール。

 

・逐次削除型ルール

複数の属性に必要条件を設定し、条件を満たさない製品を逐次削除していくルール。

 

・感情参照型ルール

好き・嫌いで選ぶルール。

選択肢1. 耐久消費財などの複雑な製品の購買意思決定においては、非補償型の評価方法のみが用いられることが多い。

誤り。耐久消費財など長く使ったり、高価なものは補償型で慎重に選択します。

選択肢2. 非補償型の評価方法の1つに分離型がある。この方法では、代替製品の各属性に十分条件を設定し、いずれかの属性においてこの条件を満たした製品を選択する。

正しい。特定の基準が上回った場合に購入を決定します。

選択肢3. 非補償型の評価方法の1つに連結型がある。この方法では、代替製品の各属性に必要条件を設定し、いずれかの属性においてこの条件を満たした製品を選択する。

誤り。必要条件の設定になりますが、必要条件は必須の条件になりますので、すべてを満たす必要があります。

選択肢4. 補償型とは、ある属性のマイナス面が他の属性のプラス面によって相殺(補償) され得る評価方法であり、最も簡略な方法であるため、日常の簡便な意思決定や衝動型購買などの場面でしばしば用いられる。

誤り。補償型は慎重に選ぶ方法です。高価なものや条件をきっちりと評価して購買します。

選択肢5. 補償型の評価方法は、ヒューリスティックスとも呼ばれる。

誤り。ヒューリスティック(直感的)なのは非補償型です。

参考になった数3

03

代替案の評価方法に関する問題です。

選択肢1. 耐久消費財などの複雑な製品の購買意思決定においては、非補償型の評価方法のみが用いられることが多い。

不適切です。

複雑な製品の購買意思決定には、補償型の評価方法を用いることが多いです。

選択肢2. 非補償型の評価方法の1つに分離型がある。この方法では、代替製品の各属性に十分条件を設定し、いずれかの属性においてこの条件を満たした製品を選択する。

適切です。

選択肢3. 非補償型の評価方法の1つに連結型がある。この方法では、代替製品の各属性に必要条件を設定し、いずれかの属性においてこの条件を満たした製品を選択する。

不適切です。

連結型は必要条件をすべて満たした製品を選択する方法です。

選択肢4. 補償型とは、ある属性のマイナス面が他の属性のプラス面によって相殺(補償) され得る評価方法であり、最も簡略な方法であるため、日常の簡便な意思決定や衝動型購買などの場面でしばしば用いられる。

不適切です。

補償型とは、ある属性のマイナス面が他の属性のプラス面によって相殺(補償) され得る評価方法ですので、最も簡略とは言えません。

選択肢5. 補償型の評価方法は、ヒューリスティックスとも呼ばれる。

不適切です。

非補償型の評価方法は、ヒューリスティックスとも呼ばれます。

参考になった数3