中小企業診断士の過去問
令和5年度(2023年)
企業経営理論 問38

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 令和5年度(2023年) 問38 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

消費者ニーズの充足や顧客満足の向上を目指すマーケティングにとって、消費者を理解することは不可欠である。企業は、①消費者の購買意思決定プロセス②消費者に及ぼす心理的効果についての理解を通して、適切なマーケティングを実行していく必要がある。

文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • アンカリング効果は、全く同じコーヒーが1,000円で提供されていた場合に、高級ブランド店が立ち並ぶエリアにあるカフェではそれほど高価に感じないが、若者向け商品を低価格で提供するカジュアルな店が立ち並ぶエリアにあるカフェでは高価に感じるような現象を説明することができる。
  • サンクコスト効果は、事前に購入する回数券の使用期限が近づくほど利用頻度を増加させることによって使い切ろうとする消費者心理を説明することができる。
  • バンドワゴン効果は、小さなカップにあふれそうな量を盛り付けることで人気のジェラート店が、今までと同じ量を入れても余裕がある大きさのカップに変更した結果、以前よりも顧客が商品に価値を感じなくなるという現象を説明することができる。
  • プロスペクト理論は、交通費や昼食費は数百円の支出でも痛みを感じて節約しようとするにもかかわらず、コンサートや洋服といった自分の好きなことやモノに対しては数百円の支出の増加は気にならないという現象を説明することができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

消費者に及ぼす心理的効果についての問題です。

選択肢1. アンカリング効果は、全く同じコーヒーが1,000円で提供されていた場合に、高級ブランド店が立ち並ぶエリアにあるカフェではそれほど高価に感じないが、若者向け商品を低価格で提供するカジュアルな店が立ち並ぶエリアにあるカフェでは高価に感じるような現象を説明することができる。

正解の選択肢となります。

選択肢2. サンクコスト効果は、事前に購入する回数券の使用期限が近づくほど利用頻度を増加させることによって使い切ろうとする消費者心理を説明することができる。

サンクコスト効果は、回数券を購入した後、比較的早い時期に利用頻度を増加させる消費者心理である説明することができます。

サンクコスト(埋没費用)とは、回収不可能な費用を意味します。本選択肢でいえば、回数券の購入費用に該当します。お金を支払って回数券を購入しているため、回数券を利用することで費用を回収しよう(元を取ろう)とします。

選択肢3. バンドワゴン効果は、小さなカップにあふれそうな量を盛り付けることで人気のジェラート店が、今までと同じ量を入れても余裕がある大きさのカップに変更した結果、以前よりも顧客が商品に価値を感じなくなるという現象を説明することができる。

本選択肢はフレーミング効果の説明です。

バンドワゴン効果とは、行列ができている店は人気があると思ってつい並んでしまう(行列が行列を呼ぶ)ことで、日本語では「勝ち馬に乗る」ともいいます。

選択肢4. プロスペクト理論は、交通費や昼食費は数百円の支出でも痛みを感じて節約しようとするにもかかわらず、コンサートや洋服といった自分の好きなことやモノに対しては数百円の支出の増加は気にならないという現象を説明することができる。

本選択肢は心理的財布の説明です。

プロスペクト理論とは、人間は不確実性を伴う判断を行なう時に、条件や状況によって合理的な価値判断ができない場合があるというものです。

プロスペクト理論の具体例として宝くじがあります。宝くじを購入しても外れる可能性の方がはるかに高い(連番でも10枚に1枚しか当たりません)と分かっていても、「買わなければ当たらない」などと自分に言い訳しながら購入してしまうのです。

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02

消費者に及ぼす心理的効果に関する問題です。

選択肢1. アンカリング効果は、全く同じコーヒーが1,000円で提供されていた場合に、高級ブランド店が立ち並ぶエリアにあるカフェではそれほど高価に感じないが、若者向け商品を低価格で提供するカジュアルな店が立ち並ぶエリアにあるカフェでは高価に感じるような現象を説明することができる。

適切です。

アンカリング効果は、先に与えられた情報の影響を受けて判断を行ってしまうことです。高級ブランド店が立ち並ぶエリアでは、物価が高いと認識している状態でコーヒーの提供を受けますので、1,000円で提供されてもそれほど高価に感じません。

選択肢2. サンクコスト効果は、事前に購入する回数券の使用期限が近づくほど利用頻度を増加させることによって使い切ろうとする消費者心理を説明することができる。

不適切です。

サンクコスト効果では、事前に購入する回数券について、購入してできるだけ早めに利用頻度を増加させることによって使い切ろうとする消費者心理です。

選択肢3. バンドワゴン効果は、小さなカップにあふれそうな量を盛り付けることで人気のジェラート店が、今までと同じ量を入れても余裕がある大きさのカップに変更した結果、以前よりも顧客が商品に価値を感じなくなるという現象を説明することができる。

不適切です。

バンドワゴン効果は、大勢が支持しているものや行列店の商品をより良いものと感じる心理です。

選択肢4. プロスペクト理論は、交通費や昼食費は数百円の支出でも痛みを感じて節約しようとするにもかかわらず、コンサートや洋服といった自分の好きなことやモノに対しては数百円の支出の増加は気にならないという現象を説明することができる。

不適切です。

プロスペクト理論は、不確実で損失を被る可能性があることを理解しながら購入してしまう心理のことです。

参考になった数3

03

正解は、「アンカリング効果は、全く同じコーヒーが1,000円で提供されていた場合に、高級ブランド店が立ち並ぶエリアにあるカフェではそれほど高価に感じないが、若者向け商品を低価格で提供するカジュアルな店が立ち並ぶエリアにあるカフェでは高価に感じるような現象を説明することができる。」です。

 

【基礎知識】

行動経済学の各理論です。

 

主な理論について紹介します。

 

 

〇ハロー効果

「ハロー」は日本語で「後光」や「円光」などのことで、特定の長所や強みが秀でていると、他の部分についてもよく見えてしまうという傾向を指します。結果全体の評価にも影響を与えます。

 

無名でも何か1点がすごいと他もすごいんではと思ってしまう心理です。

 

 

〇サンクコスト効果

サンクコストは機会費用のことです。その費用に引っ張られて、意思決定に影響を与える心理を言います。

 

例えば車で色んな設備を後から設置していった場合に乗り換えるときに設備投資してきた費用を惜しんでしまうといった心理です。

 

 

〇プロスペクト理論

人は損失を回避する傾向があり、状況によってその判断が変わります。結果、不確実性があると、人は合理的な意思決定を行うことができなくなるという理論です。

 

例えば、年利10%で今100万円もらえるのと、1年後に111万円もらえるのでは、111万円のほうが価値が高いはずですが、「もらえない」というリスクを嫌い、前者を選ぶといった心理です。

 

 

〇アンカリング効果(最初の数字が基準になる)

アンカーは船のいかりの意味です。アンカリング効果とは最初に与えた印象的な情報がユーザーの中に残ってしまい、最終的な意思決定の段階まで影響し続けてしまう心理です。

 

例えば定価10万円を90%引きとなると、1万円のものと見て安くなったと感じます。しかし定価が同じのものでも10万円の90%引きのほうが安くなったと思う心理です。バーゲンなどでこの心理が利用されます。

 

 

〇認知的不協和(矛盾を正当化する)

自身の考えと行動と矛盾する考えや行動を認知している状態のときに、不快を感じることです。そのため、人はその不快感を取り除くために別の考え方で正当化しようとします。

 

例えば、ダイエットしたい気持ちとカロリーの高いものを食べたいといった気持ちの不快感です。その際に不快感を取り除くために、ストレスが増えて身体に悪いといった理由でカロリーの高いものを摂取してしまうといった対応をしてしまいます。

 

 

〇バンドワゴン効果

皆が選んでるのであればいいのではと感じてしまう心理です。本はある一定の部数を超えると逓増的に販売数が伸びるといったこともこの効果の一つです。一方で、判官びいきのように、負けている方を応援するといったアンダードッグ(負け犬)効果もあります。

選択肢1. アンカリング効果は、全く同じコーヒーが1,000円で提供されていた場合に、高級ブランド店が立ち並ぶエリアにあるカフェではそれほど高価に感じないが、若者向け商品を低価格で提供するカジュアルな店が立ち並ぶエリアにあるカフェでは高価に感じるような現象を説明することができる。

正しい。街の第一印象で、自然と相場観(アンカリング)を持ってしまっている例です。

選択肢2. サンクコスト効果は、事前に購入する回数券の使用期限が近づくほど利用頻度を増加させることによって使い切ろうとする消費者心理を説明することができる。

誤り。サンクコスト効果は取り戻せない損失をもったいなく思う心理です。回数券は1回あたりの単価が決まっており、使用により取り戻せるのでこのような状況にはなりません。ただし、使用期限が迫って、使い切ろうとする意識は働きますが、サンクコスト効果ではありません。

選択肢3. バンドワゴン効果は、小さなカップにあふれそうな量を盛り付けることで人気のジェラート店が、今までと同じ量を入れても余裕がある大きさのカップに変更した結果、以前よりも顧客が商品に価値を感じなくなるという現象を説明することができる。

誤り。バンドワゴン効果は皆が選んでるのであればいいのではと感じてしまう心理です。

選択肢4. プロスペクト理論は、交通費や昼食費は数百円の支出でも痛みを感じて節約しようとするにもかかわらず、コンサートや洋服といった自分の好きなことやモノに対しては数百円の支出の増加は気にならないという現象を説明することができる。

誤り。記載内容は心理財布という心理です。

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