中小企業診断士の過去問
令和5年度(2023年)
経営法務 問8

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和5年度(2023年) 問8 (訂正依頼・報告はこちら)

以下の会話は、X株式会社の代表取締役である甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
なお、本問における吸収合併の手続においては、X株式会社を消滅会社とすることを念頭に置いている。

甲氏 :「このたび、X株式会社の事業の全部を譲渡することを考えており、譲渡先を探していたところ、取引先であるY株式会社から、X株式会社の事業の全部を譲り受けてもよいという話がありました。知人に聞いたところ、X株式会社の事業の全部をY株式会社に移管する方法としては、事業譲渡の他に吸収合併という方法もあるという話をしていました。取引先への商品代金の支払債務について、事業譲渡と吸収合併によって違いはあるのでしょうか。」
あなた:「( A )。」
甲氏 :「なるほど。ありがとうございます。では、吸収合併と事業譲渡で、Y株式会社から受け取る対価に違いはあるのでしょうか。」
あなた:「( B )。」
甲氏 :「では、Y株式会社に吸収合併又は事業譲渡ですべての事業を移管した場合、X株式会社はどうなるのでしょうか。」
あなた:「( C )。」
甲氏 :「なかなか悩ましいですね。実は、Y株式会社の他に、私の知人である乙氏からX株式会社の事業の全部を承継してもよいという話も聞いています。乙氏は会社を設立しておらず、個人で事業を行っているのですが、事業譲渡や吸収合併は、相手先が会社でなくてもすることができるのでしょうか。」
あなた:「( D )。」
甲氏 :「分かりました。今日のお話を踏まえ、スキームを検討します。また、ご相談させてください。」
あなた:「必要があれば、弁護士を紹介しますので、お気軽にご相談ください。」

会話の中の空欄CとDに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
  • C:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、X株式会社は当然に解散します  D:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、相手先は会社である必要があります
  • C:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、X株式会社は当然に解散します  D:吸収合併の場合は、相手先は会社である必要がありますが、事業譲渡の場合は相手先が会社である必要はありません
  • C:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、X株式会社は当然には解散しません  D:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、相手先は会社である必要があります
  • C:吸収合併の場合は、X株式会社は当然に解散しますが、事業譲渡の場合は当然には解散しません  D:吸収合併の場合は、相手先は会社である必要がありますが、事業譲渡の場合は相手先が会社である必要はありません

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (2件)

01

事業譲渡と吸収合併による違いを問う問題です。

 

本問は、空欄Cの知識だけで正解することができます。しかも、その知識は基本的レベルの内容ですので、是非とも正解したいところです。

 

X株式会社のすべての事業をY株式会社に移管した場合、X株式会社内には何も事業が残らないことになります。その後の扱いについては、事業譲渡や吸収合併とで異なります。

 

結論から申し上げますと、吸収合併の場合はX株式会社は解散しますが、事業譲渡の場合はX株式会社は解散するとは限りません。

これは、吸収合併がX株式会社の権利義務のすべてをY株式会社に承継させるものに対して、事業譲渡はX株式会社の「事業」をY株式会社に譲渡するだけであり、X株式会社「そのもの」を譲渡するわけではないからです。つまり、事業譲渡後もX株式会社の法人格は存続していますので、X株式会社は新しい事業を立ち上げることも可能です。

 

空欄Cだけで正答してしまうため、空欄Dについても自ずと正解が定まってしまいますが、吸収合併については、上記の説明から相手先は会社である必要があります(吸収合併は、会社同士で行なうものであるため)。一方、事業譲渡については相手先が個人であっても構いません。

選択肢1. C:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、X株式会社は当然に解散します  D:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、相手先は会社である必要があります

C・Dいずれも不適切です。

選択肢2. C:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、X株式会社は当然に解散します  D:吸収合併の場合は、相手先は会社である必要がありますが、事業譲渡の場合は相手先が会社である必要はありません

Cが不適切です。

選択肢3. C:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、X株式会社は当然には解散しません  D:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、相手先は会社である必要があります

C・Dいずれも不適切です。

選択肢4. C:吸収合併の場合は、X株式会社は当然に解散しますが、事業譲渡の場合は当然には解散しません  D:吸収合併の場合は、相手先は会社である必要がありますが、事業譲渡の場合は相手先が会社である必要はありません

正解の選択肢となります。

参考になった数6

02

吸収合併と事業譲渡における解散と法人格についての問題です。

 

吸収合併では消滅会社は解散と同時に精算手続きを経ることなく消滅します

一方、事業譲渡では譲渡企業は解散せず、法人格が残ります

 

吸収合併を行えるのは、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社に限られています

事業譲渡は通常の取引上の契約であるため、会社に限らず個人も行えます

 

空欄Cに該当するものは、 吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、X株式会社は当然には解散しません です。

空欄Dに該当するものは、 吸収合併の場合は、相手先は会社である必要がありますが、事業譲渡の場合は相手先が会社である必要はありません です。

選択肢1. C:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、X株式会社は当然に解散します  D:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、相手先は会社である必要があります

本選択肢は不正解です。

選択肢2. C:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、X株式会社は当然に解散します  D:吸収合併の場合は、相手先は会社である必要がありますが、事業譲渡の場合は相手先が会社である必要はありません

本選択肢は不正解です。

選択肢3. C:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、X株式会社は当然には解散しません  D:吸収合併、事業譲渡のいずれの場合も、相手先は会社である必要があります

本選択肢は不正解です。

選択肢4. C:吸収合併の場合は、X株式会社は当然に解散しますが、事業譲渡の場合は当然には解散しません  D:吸収合併の場合は、相手先は会社である必要がありますが、事業譲渡の場合は相手先が会社である必要はありません

本選択肢が正解です。

まとめ

吸収合併と事業譲渡について改めて簡単にまとめておきます。

 

吸収合併とは、存続会社が消滅会社の権利義務や取引先との契約、労働契約などを包括的に継承します。

消滅会社と呼称するように、吸収合併後に吸収された会社は精算手続を経ることなく消滅します。

 

事業譲渡は、事業の一部又は全部を譲渡することです。

譲渡の対象には有形資産も無形資産も該当します。

譲渡は対象事業の契約などを個別に継承するため、債権者の承諾が必要となります。

事業譲渡では事業譲渡後も、譲渡した企業は存続します。

 

吸収合併も事業譲渡も対価の柔軟化が図られているため、株式や金銭など何かに限定されることがなくなっています。

参考になった数3