技術士 過去問
令和5年度(2023年)
問39 (適性科目 問9)
問題文
技術者にとって、過去の「失敗事例」は貴重な情報であり、対岸の火事とせず、他山の石として、自らの業務に活かすことは重要である。
次の事故・事件に関する記述のうち、事実と異なっているものはどれか。
次の事故・事件に関する記述のうち、事実と異なっているものはどれか。
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問題
技術士 第一次試験 令和5年度(2023年) 問39(適性科目 問9) (訂正依頼・報告はこちら)
技術者にとって、過去の「失敗事例」は貴重な情報であり、対岸の火事とせず、他山の石として、自らの業務に活かすことは重要である。
次の事故・事件に関する記述のうち、事実と異なっているものはどれか。
次の事故・事件に関する記述のうち、事実と異なっているものはどれか。
- 2000年、大手乳業企業の低脂肪乳による集団食中毒事件;
原因は、脱脂粉乳工場での停電復旧後の不適切な処置であった。初期の一部消費者からの苦情に対し、全消費者への速やかな情報開示がされず、結果として製品回収が遅れ被害が拡大した。組織として経営トップの危機管理の甘さがあり、経営トップの責任体制、リーダーシップの欠如などが指摘された。 - 2004年、六本木高層商業ビルでの回転ドアの事故;
原因は、人(事故は幼児)の挟まれに対する安全制御装置(検知と非常停止)の不適切な設計とその運用管理の不備であった。設計段階において、高層ビルに適した機能追加やデザイン性を優先し、海外オリジナルの軽量設計を軽視して制御安全に頼る設計としていたことなどが指摘された。 - 2005年、JR西日本福知山線の列車の脱線転覆事故;
原因は、自動列車停止装置(ATS)が未設置の急カーブ侵入部において、制限速度を大きく超え、ブレーキが遅れたことであった。組織全体で安全を確保する仕組みが構築できていなかった背景として、会社全体で安全最優先の風土が構築できておらず、特に経営層において安全最優先の認識と行動が不十分であったことが指摘された。 - 2006年、東京都の都営アパートにおける海外メーカ社製のエレベータ事故;
原因は、保守点検整備を実施した会社が原設計や保守ノウハウを十分に理解していなかったことであった。その結果ゴンドラのケーブルが破断し落下したものである。 - 2012年、中央自動車道笹子トンネルの天井崩落事故;
原因は、トンネル給排気ダクト用天井のアンカーボルト部の劣化脱落である。建設当時の設計、施工に関する技術不足があり、またその後の保守点検(維持管理)も不十分であった。この事故は、日本国内全体の社会インフラの老朽化と適切な維持管理に対する本格的な取組の契機となった。
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この過去問の解説 (3件)
01
失敗事例の研究は、技術士にとっても重要な課題です。但しこの問題では、日ごろの新聞情報などの積極的収集を心がけておく必要があります(SNS情報などではなく、信頼性の高い情報を収集)。
原因は、脱脂粉乳工場での停電復旧後の不適切な処置であった。初期の一部消費者からの苦情に対し、全消費者への速やかな情報開示がされず、結果として製品回収が遅れ被害が拡大した。組織として経営トップの危機管理の甘さがあり、経営トップの責任体制、リーダーシップの欠如などが指摘された。
実際にあり、工場内配管ラインの洗浄不足などが原因でした。
原因は、人(事故は幼児)の挟まれに対する安全制御装置(検知と非常停止)の不適切な設計とその運用管理の不備であった。設計段階において、高層ビルに適した機能追加やデザイン性を優先し、海外オリジナルの軽量設計を軽視して制御安全に頼る設計としていたことなどが指摘された。
こちらも実際にあった事例です。
原因は、自動列車停止装置(ATS)が未設置の急カーブ侵入部において、制限速度を大きく超え、ブレーキが遅れたことであった。組織全体で安全を確保する仕組みが構築できていなかった背景として、会社全体で安全最優先の風土が構築できておらず、特に経営層において安全最優先の認識と行動が不十分であったことが指摘された。
実際にあり、JR史上、非常に大きな列車事故となりました。
原因は、保守点検整備を実施した会社が原設計や保守ノウハウを十分に理解していなかったことであった。その結果ゴンドラのケーブルが破断し落下したものである。
事故はありましたが、エレベーターが上昇して起きたものです(事実と異なる)。本選択肢が正解です。
原因は、トンネル給排気ダクト用天井のアンカーボルト部の劣化脱落である。建設当時の設計、施工に関する技術不足があり、またその後の保守点検(維持管理)も不十分であった。この事故は、日本国内全体の社会インフラの老朽化と適切な維持管理に対する本格的な取組の契機となった。
こちらも高速道路上での、実際にあった非常に大きな事故です。
新聞情報なども適切に身に付けておくべき知識となります。
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02
過去の事例に関する出題です。有名な事件について知っておくぐらいしか対策はありません。
原因は、脱脂粉乳工場での停電復旧後の不適切な処置であった。初期の一部消費者からの苦情に対し、全消費者への速やかな情報開示がされず、結果として製品回収が遅れ被害が拡大した。組織として経営トップの危機管理の甘さがあり、経営トップの責任体制、リーダーシップの欠如などが指摘された。
正しい内容です。雪印乳業(株)は事件直後の対応に手間取り、商品の回収やお客様・消費者への告知に時間を要したため、被害は13,420人に及びました。
原因は、人(事故は幼児)の挟まれに対する安全制御装置(検知と非常停止)の不適切な設計とその運用管理の不備であった。設計段階において、高層ビルに適した機能追加やデザイン性を優先し、海外オリジナルの軽量設計を軽視して制御安全に頼る設計としていたことなどが指摘された。
正しい内容です。回転ドアの重量が重く、停止動作開始後に停止するまでに時間がかかること、および男児がセンサの死角に入り緊急停止が働かなかったことが主な原因でした。6歳男児が犠牲となりました。
原因は、自動列車停止装置(ATS)が未設置の急カーブ侵入部において、制限速度を大きく超え、ブレーキが遅れたことであった。組織全体で安全を確保する仕組みが構築できていなかった背景として、会社全体で安全最優先の風土が構築できておらず、特に経営層において安全最優先の認識と行動が不十分であったことが指摘された。
正しい内容です。ブレーキが遅れたことが直接要因ですが、JR西日本がミスをした運転士に普段から懲罰的な再教育制度である日勤教育や、懲戒処分をしていた社内風土があったことも背景にあると指摘されています。
原因は、保守点検整備を実施した会社が原設計や保守ノウハウを十分に理解していなかったことであった。その結果ゴンドラのケーブルが破断し落下したものである。
シンドラーエベレータ事故ということで知られている事件です。扉が閉まらないまま急にエレベータが上に動き出し、エレベータ内部の床部分と12階の天井の間に挟まれて死亡しています。ケーブル破談による落下ではありません。エレベータの製造メーカから保守業者への保守点検に関する情報不足、また安価な業者による不十分な保守点検が原因とされています。以上から本選択肢が誤りです。
原因は、トンネル給排気ダクト用天井のアンカーボルト部の劣化脱落である。建設当時の設計、施工に関する技術不足があり、またその後の保守点検(維持管理)も不十分であった。この事故は、日本国内全体の社会インフラの老朽化と適切な維持管理に対する本格的な取組の契機となった。
正しい内容です。ボルトの強度不足が天井崩落の原因とされています。本事故により全国の緊急点検なども実施されました。
本問題は知っている以外に正答にたどりつくことが難しいです。どれも有名な事件なのでここで覚えておきましょう。
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03
特に記述の中で、技術的な原因(設計・施工・保守)や組織的な問題(経営や文化)に注意を向けると、事実の誤りを見つけやすくなります。
原因は、脱脂粉乳工場での停電復旧後の不適切な処置であった。初期の一部消費者からの苦情に対し、全消費者への速やかな情報開示がされず、結果として製品回収が遅れ被害が拡大した。組織として経営トップの危機管理の甘さがあり、経営トップの責任体制、リーダーシップの欠如などが指摘された。
事実に基づいています。
停電復旧後の不適切な処置が原因で、情報開示が遅れたことで被害が拡大しました。また、経営トップの危機管理の問題や責任体制の欠如が指摘されています。
原因は、人(事故は幼児)の挟まれに対する安全制御装置(検知と非常停止)の不適切な設計とその運用管理の不備であった。設計段階において、高層ビルに適した機能追加やデザイン性を優先し、海外オリジナルの軽量設計を軽視して制御安全に頼る設計としていたことなどが指摘された。
事実に基づいています。
幼児が挟まれる事故が発生した原因として、安全装置の設計や運用管理の不備が挙げられます。また、デザイン性や機能追加が優先され、安全性の軽視が問題となったことも事実です。
原因は、自動列車停止装置(ATS)が未設置の急カーブ侵入部において、制限速度を大きく超え、ブレーキが遅れたことであった。組織全体で安全を確保する仕組みが構築できていなかった背景として、会社全体で安全最優先の風土が構築できておらず、特に経営層において安全最優先の認識と行動が不十分であったことが指摘された。
事実に基づいています。
ATSが設置されていない急カーブでの速度超過が原因でした。組織全体で安全文化が構築されておらず、経営層の安全意識が不足していた点が指摘されています。
原因は、保守点検整備を実施した会社が原設計や保守ノウハウを十分に理解していなかったことであった。その結果ゴンドラのケーブルが破断し落下したものである。
事実と異なります。
この事故では、エレベーターが突然急上昇して挟まれるという内容が本当の原因です。原因は、保守管理の不備や装置の設計不良でしたが、記述されているような「ゴンドラのケーブルが破断し落下した」という内容ではありません。
原因は、トンネル給排気ダクト用天井のアンカーボルト部の劣化脱落である。建設当時の設計、施工に関する技術不足があり、またその後の保守点検(維持管理)も不十分であった。この事故は、日本国内全体の社会インフラの老朽化と適切な維持管理に対する本格的な取組の契機となった。
事実に基づいています。
天井板のアンカーボルトの劣化が原因であり、設計や施工の技術不足、維持管理の不備が問題視されました。この事故がインフラの老朽化への対策を促す契機となった点も正確です。
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